マスメディアやネットでは明文化されにくい情報を、随時お伝えしていきます。
「米田智彦のトーキョー遊動日記」vol.001
2012年6月8日 創刊号
目次
2012年6月8日 創刊号
目次
1. ごあいさつ
2. 連続ノンフィクション「ノマドトーキョー」
第1話 家を捨てて旅に出てみた
3. シェアスペース百景
第1回:StartUp44田寮(東京・渋谷)
4. ストリートワイズな人たち
第1回:メチャクチャにヤバイ就活生・近藤佑子
5. ノマド必需グッズ
6. Q&A
7. お知らせ
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■1.ごあいさつ
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現代編集者と名乗っています米田智彦と申します。
元々、出版社に勤務していた、所謂オーソドックスな編集者だったわけですが、わけあって数年前にフリーランスとなり、食うためにありとあらゆる仕事をするうちに、なんでも「編集」する、ちょっと変わった編集者となっていたことに気づきました。
ここで言う編集とは、企画を立て、調査・取材をし、素材を集め、それらを組み合わせてアウトプットするということです。
これはもはや出版・ウェブだけでもない行為です。
イベントでも商品の開発でも、もしかしたら料理でも「編集」と言えるかもしれません。そこで、私は現代における編集行為を行う者でありたいという希望も込めて自ら「現代編集者」と名乗っています。
そんな私ですが、何より大事にしていることがあります。それは「自分の身体で体験すること」です。
時代は情報が我々に洪水の如く押し寄せる状況となっています。目と耳、すなわち、網膜と鼓膜の2つの刺激だけで世界を判断することが増えましたが、それは世界の断片しか理解していないと私は考えます。
感情を喚起させるものは匂いや香り、味、舌触り、手に伝わる温もり、肌に吹く風……そういった五感全てをフル可動すべきと考えます。
現代はいわば「知っているつもり社会」です。真偽の程はわからぬまま、ウラを取らぬまま、何でもかんでも理解したつもりにうっかり陥ってしまう。
検索すれば、曖昧な情報も確かなものに見える。でも、そこに落とし穴があります。究極的に言えば、全ての情報は誰かの主観的な感想が含まれています。
私は現場に赴き、自らの身体を事象にねじ込み、五感で感じることを集め、編集してお届けしたい。そこにももちろん、私の主観が含まれています。でも、もはやそれしか私が伝えるものなんてないだろうと思うからです。デスクトップの前に居続けるだけではこのメルマガを書く意味もないだろうと。
そういった意味では、 2011年、家と家財を捨て、東京をシェアするように暮らした「ノマドトーキョー」は私自身にとってもエポックメイキングなものであり、今後の方向性を決定づけました。
時代はマッシブな情報を扱う「キュレーション」が主流となりつつありますが、だからこそ、表現することや伝えることを生業としている身として同じことをやってはダメなのだと。
誰もが行えることとは、結局「なあんだ、自分がやらなくてもいいじゃん」という結論にしかならないのだと。
真実は代替不可能性にあり、そこにしか伝える意味なんてないんだと。そういう信念を持つようになりました。
東京をぐるぐると遊動し、働き暮らす過程で見つけたり出会った、新しくてヤバくてワイズ(賢い)な人やトピックをこのMLではお届けしていきたい。
当メルマガ、いよいよスタートです。無粋な硬い口上を述べましたが、たかだかメルマガ。通勤のお供に、ちょっとした待ち時間に、つらつらと力を抜いて読んで下さるとうれしいです。
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◆2.連載ノンフィクション「NOMAD TOKYOノマドトーキョー」
第1話 家を捨てて旅に出てみる
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こちらでは、「ノマド」ライフを始めた理由から、実際の「NOMAD TOKYO(ノマドトーキョー)」を続けることで出会ったさまざまな人物、場所、発見、モノ+αについて、連載形式でご紹介していきます。
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2011年のある日。現在地も時間感覚も定かでないような気分でゆっくり身体を起こすと、東京の見知らぬ街の、誰かの部屋で僕は寝ていた。
この年の1月11日から、「ノマド」と呼ばれる生活を始めた。
2012年6月現在となっては、この言葉は馴染みのあるものとなったが、当時は「ノマドって何なんですか?」と会う人全てに訊かれたものだ。
昨今、巷でよく言われる「ノマド」とは、特定の仕事場を持たずにPCや携帯電話だけで仕事をするビジネスマン、いわゆる「ノマドワーカー」のことを指すことが多いだろう。
しかし、ここでは「ノマドの定義」の話は置いておく。その議論は必ず泥沼になってしまう。それぞれが考えるノマド像がかなり違うし、お上や大企業が「正式なノマドと言いますのは……」と定義するようなものではないからだ。
さて、僕のやっていた「ノマド」は「ノマドワーク」とはちょっと趣が異なる。“NOMAD”本来の「遊牧民」という意味に忠実な、生活の全てに定住所を持たない「ノマドライフ」なのである。
住む家も家財も全て捨て、東京をまるごと「シェア」して、「働き」ながら「旅」して、暮らしていくこと。
それが僕のやろうとしていた「ノマド」であり、生活実験企画「ノマドトーキョー」だ。
九州の博多に生まれ育ち、東京に移り住み、アジアやヨーロッパをバックパッカーとして旅した学生時代、社会人になってから編集者となってからの取材旅行や出張を含めると、今まで30カ国ほどの土地を訪れてきた。
日常を離れることで体感する、見知らぬ場所の景色や匂い。皮膚に感じる風の触感。異国で出会うことの全ては瑞々しさを含んでいた。
そしてもちろん僕が暮らしている東京という街も、かつては全く見知らぬ土地だった。
しかし上京してはや19年。もはや人生の半分以上を過ごすことになったこの街は、僕にとって日常と言えるようになり、少しずつ色褪せたものに映るようになった。
子どもの頃から、「愛着のある街で、愛着のあるモノに囲まれて一人暮らしをしたい」と思ってきた。
1992年に初めて一人暮らしを始めた僕は、JR中央線の高円寺に移るまで、世田谷、西麻布、横浜と、3年おきぐらいに引越しを繰り返していた。
でも、「ずっとここにいてもいいや」と思えた街は高円寺だけだった。ここは生まれ故郷の福岡に次ぐ、第2の故郷になりつつあった。
30歳を過ぎてから、ある種の「見栄」や「気の張り」のようなものが精神からこぼれ落ちていくと、高円寺という街の懐の深さ、人情味というのは非常に心地が良かった。
大型スーパーやユニクロ・無印・家電製品店といったチェーン店が少なく、夕方になると、昔ながらの商店街の八百屋さんや魚屋のおばちゃんやお兄ちゃんと気軽に話しながら今晩のおかずを買ったり、若い人が経営する飲食店や古着屋、レコード屋などで店員と仲良くなったりした。
毎晩、オープンエアな飲み屋に人が集い、老人と学生が意気投合する。
老若男女、都会者も田舎者も関係なく入り交じり、多様な文化が共生する、ありそうでなかなかない土地。そして、若者たちが音楽や芝居で一旗上げようと日本各地から集まる。まさにインディペンデント魂の塊のような街。
かつて音楽家になることを夢見ていた僕は、かつての自分を見るような感じで、駅前のロータリーや路上で歌う若者たちの姿を微笑ましく眺めていた。切ない夢と心地よい脱力と日常感覚の境界線が薄れた街。
でも、この街の居心地が良すぎて、漠然とした不安に包まれるようになったことも事実だった。
フリーランスの編集者という自由きままな生活を30過ぎて得た僕は、主に自宅で仕事をし、顔馴染みの店で食事をし、仲間たちがいるバーに通った。
そんな風に、生活の全てがこの街の中で事足りてしまうため、いつの間にか、電車で10分足らずの新宿に出るのも億劫になってしまっていた。
年々街に対する愛着が深まると同時に、漠たる不安も感じるようになった。いや、それでも高円寺はいい街だと思っているけれど。
でも、一寸先は闇のヤクザなフリーランス稼業の身。「東京」というもっと大きなターゲットをクライアントにしなければ、この先仕事は縮小していく一方かもしれない。そんな危機感もあった。
マンションの契約更新日は2011年1月4日だった。 引越しを機に部屋に溜まった山のような本やCD、要らない服などを処分したいという気持ちもあって、契約を更新しないことは決めていた。
でも、僕は、高円寺以外のどこの街に住めばいいのか、皆目検討がつかなかった。
「便利な街だが、今さら下北沢や中目黒もないよなぁ。神楽坂とか千駄木といった情緒のある街もいいけど、ちょっと敷居が高いなぁ……」、そんなことを考えながら年末進行の忙しさもあって、新居探しをサボっていた。
そんな時、買ったり捨てたりするだけでなく、モノを共有すればいいんだという、「シェア」という新しい考えに出会った。
あと数週間で住む家も無くなるし、いっそ家を持たずに暮らす生活にシェアという概念を盛り込み、コンセプチュアルにやってみるのは面白いんじゃないか、と思い立った。
「東京という都市ごとシェアする」というアイデアは、誰もやってなさそうでなんだかワクワクするし、住むところも働く場所もシェアすればなんとかなるのではないか? そんな無謀なアイデアが止まらなくなってしまった。
自分の部屋や住んでいる街以外だと、東京の中でもほんの一部の場所でしか寝泊りしたことがない。仕事をしたり、飲んだり、通過した街はあっても、実際は泊まったことのない街ばかりである。
僕は、20年近く東京に住みながら、この巨大な都市の全容を全くわかっていないことに気付いた。一度、ある土地に住んでしまうと、なかなかそこを旅しようとは思わないものだ。
アジアやヨーロッパを放浪した学生時代、バックパッカーの頃は、一定期間働き、お金を貯めて旅に出ていた。
その時の旅の高揚感はすごかったが、いつも頭の片隅にあったのは、「いつか帰って仕事しなきゃいけないんだよな」ということだった。
でも今は違う。フリーランスの身。PCとケータイがあればどこでも仕事が出来るではないか。もしかしたら、働きながら旅ができるかもしれない。
ずっと旅をする。そのためには移動しながら働く。これは長い間、僕の潜在意識にあった、1つの夢だった。
そんなことをあれこれ夢想していると、雷のように、「人生最後のバックパック旅行は東京だった」というフレーズが落ちてきたのである。
僕はその時、もうすぐで38歳になろうとしていた。
40歳という人生の節目を前に、もう一つ冒険しなければならないような強迫観念もあった。このまま小さくまとまってどうするんだ!と。
当然ながら、40代になればもはや若者という範疇ではない。少年の頃からの人生の師であったジョン・レノンが死んだのが40歳ということもあり、昔から大きなターニングポイントだと考えていた。
やるなら今しかないかもな……。
すべてを一回チャラにして、また新しいことにチャレンジしてみようと。
インターネットがない時代、『地球の歩き方』を片手にインドやパキスタンの片田舎をウロウロと歩いた時のような新鮮な風を自分の心に吹かせるのだ。
ささやかな試みだけれど、僕は遠足に出る前の晩のように興奮していた。
さぁ、この広い東京という街で、どんな出会いやハプニングが待っているのだろうか……。
次回「断ち切れぬモノへの愛着と旅立ち(仮)」へ続く。
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■3.シェアスペース百景
第1回:StartUp44田寮(東京・渋谷)
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「あなたの仕事を、ちょっとだけエキサイティングにする。。」をコンセプトに2011年11月オープンしたコワーキングスペースが東京・渋谷にある「StaetUp44田寮(スタートアップよしだりょう)」である。
日本のビジネスマンが、学生時代のように“好きな何かに情熱を傾けていた自分”に「フッ」と戻り、熱い仲間と共に仕事を創造していく、そんな“ちょっとムサ苦しいけどエキサイティング”な学生自治寮のような場所を目指している。
そんなStartUp44田寮の“寮長”、赤木優理さんのお話を3回に分けてお送りいたします。
■ 赤木優理(あかぎ ゆうり)
StartUp44田寮寮長。1978年生まれ、京都府出身。
京都大学工学部建築学科を卒業後、不動産関連会社に勤務。
リーマンショック後民事再生にかかり、後処理を担当。
2012年5月現在、株式会社レスもあ代表取締役、まじめに日本を考える!NPO法人78会理事。
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――まずは、StartUp44田寮を立ち上げたきっかけから聞かせてもらえますか?
2010年夏の神田のオフィス街から始まるんですよね?
赤木(以下、赤):そうです、前職が不動産系だったんですけど、リーマンショックの後、会社を存続させるために民事再生の手続きをして、後処理をずっとしている頃ですね。
何かまったく違うことをやりたいと思っていました。
――当時は、まだコワーキングとか、シェアオフィス的なものをつくるといった考えもなかったんですよね?
赤:言葉も知らなかったですね。
ただ、「日本人ひとり一人が幸せを感じる経済を作るには……?」とか、「働き方を創造型にシフトする」といった考えはありました。
――それがコワーキングスペースの運営に具現化されていったプロセスというのは?
赤:まず、日本人は働き方を変えなきゃいけないと思ったんです。
今までの組織って会社から「これやってくれ」と言われてその仕事をやって「働かされている」。その状況がはたして幸せなのか。
自分で自発的に「俺はこれをやりたいんだ!」ということを仕事にしていかないとこれからは難しいだろうと。
では、「自発的に何かをやっている人って誰なんだろう?」という考えに至りました。
ちょうどその頃大学の後輩である上村康太から、「Google」を辞めて「ソーシャルランチ」を立ち上げたいがどう思うか? という相談を受けたり、当時よく出入りしていた六本木の「awabar」でオーナーの小笠原治さんやスタートアップの方達と触れていくなかで、「スタートアップこそ、自発的に何かをやろうとしている人達なのではないか!」と考えるようになりました。
後に、西麻布の「NOMAD NEW’S BASE」をOPENすることになる「awabar」の小笠原さんとは、スタートアップやノマドとかが働きやすい環境を整備したいと話したりしていたんですけど、そんな時に「コワーキング」って言葉が自分の中でヒットしたんですね。「俺がやりたかったのはこれかもしれない!」となったんです。
――すでに会社はあって、でも何をやるかは決まっていなかったわけですね?
赤:そうです。それでやると決まったのが2011年10月……。
――えらい最近ですね(笑)。
赤:はい(笑)。でも、そこから一挙にダダダッと動いて、11月中旬にオープンさせました。
――オープンにあたってどういう場所にしたいとか、他のスペースとの違いとかはどういう風に意識しました?
赤:場所については、上村に訊いたら「渋谷がいいです」と言われてあっさり決めた。そのくらいのノリです。
――街から入ったんですね(笑)。場所づくりについては?
赤:「学生寮みたいなものにしたいのですが」とPAX coworkingの佐谷さんに相談したら、「それって京大の吉田寮(*1)やん」って話になって、「吉田寮はいいですね!」って。そっからです。
――ああ、吉田寮は学生の自治寮としては全国的に有名ですよね。
では、入居者のイメージはありました?
こういう人に来てほしいとか、自分から声をかけたとか。
赤:スタートアップとビジネスマンっていうのは希望としてありました。
日本人の働き方を変えるには、最終的に日本人労働者の80%以上にあたる会社員の意識を変えないといけないと思ってました。
いま44田寮生は、約20名います。
――まだ起業していない人もいる?
赤:まだ起業していない人も会社員の人もいます。
――始まって半年ですが、44田寮のカラーというのは出てきました?
赤:これは44田寮生のスタートアップの言葉ですが、
「44田寮の良さは、様々な年代・立場の人が繋がっている」
所のようです(笑)。
スタートアップの彼らには、同世代の友人はたくさんいます。
起業するくらいですから、人脈もあって、カリスマもあって、力もあって……ただ、ひと回り上の世代や社会的に成功した社長をやっているような方々との接点は非常に少ないんですよ。
そんなビジネスマンとして優秀な人たちと触れ合える場というのは若いスタートアップの人たちにとって非常に刺激になるようです。
44田寮の外部サポーターとして協力してくれている78会(*2)の存在も大きいですね。
――まさに僕が考えていたことと同じです。
SNSやコワーキング/シェアスペースの集いって「横の連帯」は確実に増えていくんだけど、意外と「縦のつながり」が生まれにくいなぁと、この1年ずっと感じていて。
水平軸じゃなくて垂直軸がないと、決裁権や人事権のある人、予算のある大きなプロジェクトを任されている人となかなか組めない。
横だけだと、ボランタリーなプロジェクトが多くて、なかなかダイナミックな仕事につながっていかない。
僕は「縦」を研究したいと思って、1人で「バーティカル・ラボ」とか言ってます(笑)。
赤:図らずもそうなっていますね。
僕は最終的には「新しいメディア」が作れるのではないかと思っています。
日本は、なんだかんだ言っても既存のマスメディアが強い国ですから、彼らに勝負を挑むつもりは更々ないんですが(笑)、スタートアップのリアル世代より若い層に関しては、小さい頃からメディア慣れしていて、マス広告にうんざりしている。
テレビを見ないとか、ウェブのバナーは無視するとか、マスメディアがリーチしづらくなって来ていると思うんですよね。
こういったことから、スタートアップが新しいメディアになりえると思っています。
スタートアップが企業とコラボするとします。AKB48を応援しているファン心理と同じように、「俺が応援しているスタートアップがこれだけビッグになってきてるぜ」となると、誰かに言いたくなり、情報を拡散したくなってくる。
これに企業のプロモーションを絡めていくと、新しいメディアの力になるのでは? と思っています。
――赤木さんが言っているメディアって、マスではなく、プラットフォームというか、パイプというか……。
赤:僕は「タレント事務所」だと思ってるんですよ。
「44田プロダクション」って名前を付けてるんですけど(笑)、スタートアップがタレントで、彼らにファンがついて、知名度が上がれば上がるほど広告収入が増えていく。
ある一定の規模になると自分でやれるので「44田プロダクション」を卒業すればいいんですけど、ただデビューしたては波及効果が少ないので、パッケージにしたり、グループを組ませたりといったことが必要となってきます。
――いろんなことができそうなイメージですが、雑誌の特集やテレビに売り込むのではなく、プロジェクトになって自然にタレントが入っているっていうイメージですかね。
赤:そうですね。まだ大手とは組めていないので、波及効果は少ないですが、ローンチしている「schoo(*3)」は、SNSを中心に、ものすごい数の「いいね!」を得ていますし、今後44田寮から続々と新サービスが生まれてくる予定ですので、様々なコラボ企画が出来ると考えています。
「スタートアップの成長を促進出来る場」という44田寮の理念にも通じるものだと考えています。
次号では、StartUp44田寮の現在の取り組みや未来の形をさらに掘り下げてお届けいたします。
*1)吉田寮:1913(大正2)年に竣工された、京都大学の寄宿舎のひとつで、現存する日本最古の大学寄宿舎。学生の自治により運営されているのが特徴。
*2)78会:1978年生まれによって組織されている経営者や企業に勤める社会人を中心として活動しているNPO法人。
*3)schoo(スクー):44田寮のスタートアップ。ウェブに誕生した学校の新しいカタチを提案し、無料・WEB生中継で、さまざまな分野の授業を放送する。
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◆4.ストリートワイズな人たち
メチャクチャにヤバイ就活生・近藤佑子さん 前編
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2012年5月16日、突如としてネット上の話題をさらった「メチャクチャにヤバイ就活生・近藤佑子を採用しませんか?」というサイト(http://mechayaba.kondoyuko.com/)。
仕掛け人はそのままズバリ「近藤佑子」さん。
京大卒・東大大学院(建築学専攻)在学中という驚きの高学歴もさることながら、インパクトのあるメガネのポートレート写真(インタビューでご本人は「容姿に自信がない」とおっしゃっていましたが、そのコンプレックスをコンテンツとして上手に使っておられる)、そして特筆すべき文章の面白さ。
たとえば、
「近藤佑子の自己PR フットワークが軽い
近藤佑子のフットワークは尋常じゃない。興味を持ったことには(お金と時間の許す限り)その機会を逃さない貪欲さがある。研究室でもいろんなところにフィールドワークに行くし、旅行も大好きだ。東京と関西をよく往復しており、京都へはなんと一晩で行くことができる。京都への荷物の宅配を頼まれることもしばしばで、その様は「ゆうこの宅急便」と例えられるほどだ。
近藤佑子を雇った企業には東京から京都へ荷物をお届けできる権利をプレゼント!」
といった具合だ。
最下には「近藤佑子と、面接しよう」のボタンがあり、面接への諸々の注意事項などが書いてあるページへと進むことになっている。
就活生のみならず、多くの社会人に大きなインパクトを与え、個人の就活プロモーションとして大成功を収めた。
5/16の近藤さんの誕生日に開設されたというこのサイトは、はてなブックマークでは5/28現在、938 users、Facebookの「いいね!」は1万超えを記録。アクセスも10万PV/dayを超えたという。
このニュースがSNSを駆け巡った時、はたと思い出した。
そう、僕は彼女に会ったことがあったのだ。
ノマドトーキョーを実践中の2011年、ギークハウス水道橋(IT関連に強い“ギーク”が集うシェアハウス「ギークハス」の水道橋にあるハウス)を訪れた時、名刺交換をしていた。
「シェアハウスなど共同生活の研究をしています」と挨拶した彼女のことを覚えていた。
僕はすぐに連絡を取り、2日後の5月18日にお話を訊くことに。
〝新しい就活のスタイル″と呼んでいいのかはよく分かりませんが、近藤さんが「メチャヤバ近藤佑子」になった経緯、現在の新卒就職の現場、これからの対応などについてもうかがってきました。
●きっかけは、お誕生日企画
2012年5月16日は、近藤さんの26回目の誕生日。
「メチャヤバ近藤佑子」は、今年で3回目となる近藤さん自身の誕生日を祝うための企画としてスタートした(http://kondoyuko.com/project/)。
「誕生日に面白いことがしたい!」「新卒就活中の26歳の誕生日は二度と来ない」「せっかくだから就活に役立つものを」
そんな三段論法的につくられたサイトは、シンプルで面白く、随所に工夫が凝らされている。
4月中旬にこの企画が持ち上がり、近藤さんはサイトを一から創り上げた。もっとも最初は「Google Adwordsで婚活しよう!」と言い出した知人に便乗し「じゃあ、私はGoogle Adwordsで就活!」という軽いノリだったそうだ。
そして、婚活=「イケてるしヤバい男 長島」(謎のスキンヘッド男・長島が自分がいかにイケてるかを延々とPRするサイト)のイメージが浮かんだという。
「メチャヤバ近藤佑子」のサイトには、「*当サイトは「イケてるしヤバい男 長島からのお知らせ」様、および株式会社バーグハンバーグバーグ様とは無関係です。」という一文がある。
実は、「長島」のサイトと「メチャヤバ近藤佑子」のサイトの造りは酷似しているのだが、「無関係」と表記することで、暗に「長島」のパロディであるということを示している。
そして、「メチャヤバ近藤佑子」のすごさは、インスパイアされたサイトの物真似で終わっていないところにある。
「長島」と「バークハンバーグバーグ」のインパクトと構造を徹底解剖し、換骨奪胎して作られたのが「メチャヤバ近藤佑子」と言えるだろう。
だからこそ、近藤さんが一番アピールしたかった、近藤佑子というパーソナリティが十二分に伝わる「就活のエントリーシート」となっている。
●2日間で50ほどの企業オファー
FacebookやTwitter上での企業からの反応は、2日間で50ほどあったとか。
もちろんそれには、サイトを見ての軽いノリのものもあるようだが、その反響に近藤さん自身が驚き、戸惑っていた。そして不安を口にしていた。
社会に出たことのない学生が自身のサイトで一躍「時の人」となったのだから、僕は(いい意味で)「どや!」となっていると思っていたが、彼女はきちんと現状を把握し、先を見通していた。
その上で「誠実な対応ができていない自分」や「このオファーの中から自分で選ぶ」ことに悩んでいたのだ。
現在(6/7)「Kondo Meeting」なる面接オファーページが作られており、そこに「今後の方針」として、以下のことが明記されている。
「大学院の研究を第一とすることを前提に、
1.自分の就活の成功
2.今回私が起こした現象の理解
を実現するとともに、それらを過程を楽しく実践する。」
さて、ここからは彼女とのインタビューをご紹介したい。
●ヤバい男・長島+バーグハンバーグバーグ・シモダ=メチャヤバ近藤佑子
――「メチャクチャにヤバイ就活生・近藤佑子」のサイトがFacebookのフィードで話題になっていて、途中で「あ、この人お会いしたことある!」と思い出して連絡をとらせてもらったんです。
新しい就活ってのも、これからの時代にとって重要なテーマだし、このメルマガのテーマとしてもぜひ取材したいと思いました。
僕、最初「長島」にインスパイアされてたの気づかなかったんですよ。
近藤(以下、近):あ、もちろん。あれは直のパロディですから。
――トリビュート・トゥ・ナガシマというわけですね。
近:一番下に「関係ありません」とか書いてますけど、明らかにリスペクトです。
最初はGoogle Adwordsでプロモーションしようって話になって、結局実現はしなかったのですが。
後日、ギー水(ギークハウス水道橋の略)関係者から「メチャクチャにヤバイ近藤佑子」っていうサイトつくろうっていう話が持ち上がって。
その時は「近藤佑子はフラフープが得意だ」みたいな、フラフープを2~3回まわした動画をYouTubeにアップするとか、なんかほんとに「長島」みたいなくだらなくて面白いコンテンツを考えようって話をしてて。
――フラフープって意味がなくてステキです。
近:それで、そういう話あったけど「結局実行するのかなー」って思っていたら、「次は『メチャクチャにヤバイ近藤佑子』をつくるから、これに書いてみて」ってテンプレートを送ってくれたんです。
その時にテンプレを書き進めながら「私これでいいの!?」って思ってて。
やっぱり「長島」のそのままの真似みたいな、似たような感じで、自分のアピールしたいことって伝わるのかな、みたいなことを思ってはいたんですけど。
そこから組み立て直して、「メチャヤバ近藤佑子」ができあがりました。
――実際、この方法でガチで就職するつもりなんですか?
近:就職活動についてはどうしたらいいのか迷ってます。
まだ内定はもらってないですし、オファーに対応していくと思うんですけど、私に興味を持ってくださっているたくさんの企業と出会えた一方、その中から選ばなきゃいけないのかもしれないというプレッシャーで、逆に自由度が下がったように感じました。
あと、普通に研究活動もしてるので、すべての企業の方に会うのも難しく……誠実な対応をしていきたいんですけど、どうしたらいいのかわからなくて。
自分がもし複数の会社から内定をいただいたとして、その時に自分が選べるのかっていう。
1対1で話したら「ここも面白そう」「あそこも面白そう」みたいになるかもしれなくて。
●「不安になって泣いちゃいました」
――サイトは一見、ぶっ飛んで見えるのに、実際のところはめちゃくちゃ誠実に悩んでらっしゃるんですね。
近:昨日(5/17)ちょっと不安になって。
つらくなってしまって泣いちゃったり(苦笑)。
――反響の大きさに戸惑っていると。ところで、「メチャヤバ近藤佑子」はいつまでやるんですか?
真人間に戻るというか、キャラの維持については?
近:いえ、私、ずっと真人間なんですよ(笑)。
Twitterではフォロワーさんも増え、色んな方が見てくださっているので、丁寧な発言を心がけています。
だから「ヤバイ」っていっても「メチャヤバ」のサイトで言ってることは「私の言葉」だし、結構自然体で書いてて。
ちょっとそこに就職のPRなのに、「ウサギ柄のタイツ履きたい」とかって……。
――ちょいちょい入れてますよね(笑)。
近:そういうのも本心なんで。
例えば実際に過去にTwitterに投稿したことなどを書いてます。
あれ自体は私の言葉なんですよ。
だからあのコンテンツとTwitterは別に乖離はしていないです。
――人格としても分裂してないと。
しかし、あれによって生じたパブリックイメージがデカすぎますよね(笑)。
近:そうです。
あと、「メチャクチャにヤバイ」っていうのは誇大広告です(笑)。
――(笑)。しかし、突破力ありましたよ。
友人は「将来大物になる予感」とFacebookに書いてました。
近:一応ちゃんと考えて作ったサイトなので。
――どの辺に一番気を遣ったんですか?
近:「バーグハンバーグバーグ」が制作したサイトが面白くて、かなり参考にしました。
最初「長島」だけを参考にしたんですが、それだけじゃなくて、「バーグハンバーグバーグ」のウェブの仕事を全部見て……それがうまくあそこに反映されているかはわからないんですけど、マインドとしてはリサーチして作ったという。
――「メチャヤバ近藤佑子」を知ってから「長島」をFacebookのフィードに流している人もいましたよ(笑)。
長島さんの婚活にも近藤さんは貢献してますよ!
近:でも、「メチャクチャにヤバイ」とか言い出したのに、Facebookでは「もう私心折れそう」とか言ってますよ(苦笑)。
――どの辺が憂鬱ですか?
近:こんなにたくさんのオファーをいただいたのですが、対応していかないとと思うと挫折しそうになって……。
私もっと効率よく就活したいと思ってたのに、こんなにバズると思ってなくて。“
こういったウェブサイトを企画して作れる私”をアピールするために制作したつもりで、あとはちょっと仲間内で面白がってくれたらな、ぐらいのつもりで作ったから……むしろ、友人の反響も合わせてプレゼンテーションしようと。
――誠実ですね。なんかインタビューするのも申し訳ないような(苦笑)。
取材は止めて今後は「文通」したりとかした方がいいんでしょうか。
近:文通! そういう発想はなかったです(笑)。
――それにしても、新しい就活の形として興味深いです。
近:私は自分と乖離した行動とかできないので、演じることが難しいと思うんですよ。
Twitterで「私ヤバイのよ」、みたいな演技は絶対できないと思っていて。
リプライの中でも「意外とまともなこと書いてる」と仰ってくれる方がいて。そういうのが、もしかしたら好感をもたれているんじゃないかなと、なんとなくですけど。
私は自分が作りたいもの、例えば自分が欲しいなと思っているものしか作れないんです。
――今後の「メチャヤバ近藤佑子」はどうしたらリアルな近藤佑子と乖離せず、しかも就職活動として腑に落ちるんでしょうね。
近:就活はもっとうまくスルっと行くと思ってたら、予想よりうまくいかない悔しさってのもあって、あのサイトはその表現みたいなところもあって……。
悪意があるわけじゃないんですが、不採用になった企業で、「副社長がすごく素敵だと思ったけど、そこ落とされちゃったよ」とか、「就活イベント参加した」ってことを書いたりしました。
たくさんご連絡はいただいているのですが、全部に対応ができない状態なので、これからホント、どうしようかなって考えています。
お話をうかがった印象は、「ヤバイ」ではなく、「謙虚かつマジメ」な人だった近藤佑子さん。
話題は尽きず、ギークハウス水道橋(彼女の住居はここではないが)の夜は更けていった……。
さて、次回の「メチャクチャにヤバイ就活生・近藤佑子 後編」では、彼女のこれまでの就活遍歴や、どういった企業に就職したいか、いまの生活などについてお送りします。(続く)
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◆5.ノマド必需グッズ(米田の独断と偏見によるセレクション)
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こちらでは、米田のノマドの必需品から便利グッズなどのお役立ち情報をご紹介します。よく「カバンの中身はどんなものが入っているのですか?」と訊かれることが多いので、初号ということで、書いてみたいと思います。
・ノートパソコン
軽いことを優先するなら断然当然、マックのAirがいいと思いますが、僕はLenovoを使っています。なぜなら、一言、頑丈だからです。
遊動生活をしていると、いくら注意を払っていても、突然キャリーバッグが倒れパソコンに衝撃が加わったり、傷ついたりすることがあります。
パソコンはノマドの心臓部と言っていい。これが壊れたら手足をもがれたようなものです。
ノートパソコンが起動せず、出張先でスマホだけで原稿を書いたという冷や汗ものの経験もありますが、まだスマホやiPadではエクセルやパワポは使いにくいし、aiといった添付ファイルが開けないことも多いので、やはりノートパソコンは重宝しております。遊動生活の中でコワーキングスペースやシェアオフィスのステッカーをもらうことが多いので、ベタベタと貼り付けています。
・携帯2機
iPhoneとエクスペリア、1台は通話と音楽用、もう1台はアプリとネット・メール用と使い分けることによって、電池の減りを最小限に食い止めます。
・携帯の充電器6つ
はっきり言って携帯電話の充電が無くなるのは脅迫神経的に恐怖です。
ケータイの電池切れでノマドライフ中に宿泊先に辿り着かなかったこともありました。
iPhoneのケース自体が充電器になっているもの、充電してケータイを充電するタイプの充電器を2つ、緊急時に備えて乾電池を買えば充電出来る乾電池の充電器といった、4つの充電器を持っています。
さらにそのためのエネループの単3電池とその充電器1つも常備。
つまり全部で5つも充電器を装備していることになります。
通信が切れる、それがノマドの一番の恐怖かもしれない。
これに加えて最近、太陽光を浴びると蓄電できる充電器も買ってみました。
・バックアップ用の外付けハードディスク(携帯用)
ノートPCにもしものことがあったら……と考えて、エバーノートやドロップボックスを多用していますが、写真や動画、音楽コンテンツなど容量が大きなものは外付けHDに保存。
ですが、そのHDにもしものことがあったら、と想像し、もう1台1TBのHDも用意しています。
・肩こり・腰痛対策の塗り薬などの各種薬
肉体が資本のノマド。どこでも最高のパフォーマンスをするためには各種薬は欠かせません。
オススメはツーンという匂いがしないエレキバンなどの磁気タイプですね、やはり。
また、長時間の企画書作成や執筆で慢性の腰痛持ちのため、アメリカで100万個売れたという実績を持つ「バックジョイ」と呼ばれる背骨矯正シートをお尻に敷くこともあります。やはり腰が大事です。
・こだわりのステーショナリー
ボールペン、筆ペン、鉛筆が数本、携帯用の修正テープ、封筒と切手、それから印鑑。
ボールペンは三菱鉛筆社の「JETSTREAM」が素晴らしい書き心地で断然オススメ。文字をなかなか書かなくなった現代だからこそ、手を動かしてメモを取ったり、アイディアラフを描いたりをすることは発想の活性化につながります。
ノートはキングジムの「SHOT NOTE」を使ってます。
手書きのメモやスケッチをiPhoneのアプリで読み込んでデータにしてどこでも見られるようにしています。
ちょっと値は張りますが寄藤文平さん作の「yPad(ワイパッド)」という見開きでタスクを書いていくノートも使いやすいですよ。
また、筆ペンはいつでも冠婚葬祭の祝儀袋に書けるようにするため。
出先から請求書や納品書を送るための封筒、切手、印鑑セットも常時携帯しています。
請求書はもちろんセブンイレブンの「ネットプリント」で出力。そのままコンビニレジにあるポストに投函。
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◆8.Q&A
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◆9.お知らせ
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●公開中の坂口恭平氏原作の映画「MY HOME」の公式サイトのコンテンツ「家って、暮らしってなんだろう?」 http://myhouse-movie.com/special/にインタビューが掲載されています。
●6/16(土)19時~東京・原宿「ロケット」で開催される「100万人のキャンドルMOVIE!ナイト」のトークに登壇。
http://candle-night.org/candlemov/rocket/
●6/23(土)18時~東京・渋谷ヒカリエ8階「COURT」にてノマドワーカーのための交流会「ノマドトーキョードリンクス」の第4回を開催します。
http://www.facebook.com/pages/NOMAD-TOKYO-drinks/219883121396782
※各情報の詳細はhttp://nomadtokyo.comをご覧下さい。